早熟夫婦〜本日、極甘社長の妻となりました〜
「お前の生きがいになるものを残しておけば、万が一俺になにかあったときにも生きていけると思うぞ」

「生きがい?」


なんだろう、と小首を傾げる私に、彼はなぜか顔を近づけ、耳元で囁く。


「俺たちの子供」


……子供? 私と、尚くんの? 

確かに、自分の子がいれば、どんなに辛くてもその子を守っていくために生きていく力は湧くのだろうけれど、子孫を残すということは、つまり。

突如頭の中に破廉恥な妄想がぼわんと浮かび上がり、目を見開く。


「えっ!?」

「キョウにはいろんなこと教えてきたけど、さすがに子作りの方法はまだだったから……」


尚くんはぶつぶつとそんなことを口にしながら、ぐっと私の腰を抱き寄せ、さらにもう片方の手を頬に添えてきた。

されるがままで瞠目する私の瞳に、獣のような男らしさと色気を混じり合わせた笑みを浮かべる彼が映る。


「教えてやろうか。まずは、大人のキスから」


耽美な声が鼓膜を揺らし、親指で唇をなぞられ、心臓が猛スピードで動き始める。

ちょ、ちょっと、急になに言ってんの尚くん!! からかわれているだけだとしても、いきなり〝男〟の顔をされると、どうしたらいいかわからない!
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