あやかし都物語

視人として生きる者

このまま死ねたらいいのに。深い、深い眠りについたまま。


肌を刺すような寒さに私は目を覚ます。ああ、今日も私は生きている。痩せこけた体とは裏腹に体が重くて動かない。ふと、蔵の小窓から外を見る。雪だ。
「ちっ…。なんで俺がこんなこと…。」
突然開いた蔵の戸から溢れる光に私は思わず目を細めた。
「お兄様…。」
「お兄様と呼ぶな。汚らわしい。お前など俺の妹ではないわ。」
そう言い放ち芋を蒸したものを一欠片おき、蔵の戸を閉め、足早に去っていった。私がお兄様と呼ぶ兄は私を妹と思っていない。私の両親でさえ、私を娘と思っていない。
これが私の日常。私のにとっての普通なのだ。
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