熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~

そのとき、ずっと気まずそうにしていた従業員が、突然切実な表情になり、俺にこう言った。

「その方、私に南雲様の特徴を教えるとき……〝背が高くて王子様みたいなひと〟って、すごく素敵な笑顔で言っていて……私は赤の他人だしおふたりの関係も知らないのですが、それでも、追いかけた方がいいって思います!」

強めの口調で力強く訴えた従業員に、俺は驚きつつも励まされた。

毎日たくさんの人が訪れるであろう空港のカフェで働いている彼女は、きっと今までも色々な男女の物語を見てきただろう。

そんな彼女の直感が、詩織を追いかけるべきだと言っている。……なんだか、勇気をもらえる心地がするじゃないか。

「ありがとう。今度来るときは、ちゃんと注文させてもらうから」

「いえっ。そんなこといいですから、急いで!」

俺は微笑んで頷き、店の外へ飛び出す。

考えろ……詩織の行きそうな場所を。彼女が日本で一番先に頼るのは誰だ?

思い出せ、今まで詩織と交わした会話を――。


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