熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~

姉たちはそれ以上声をかけずに部屋の前を去っていき、その足音が聞こえなくなると、私は手のひらをお腹に当てた。そして、そこにいる小さな命に話しかけた。

「ごめんね……私なんかがお母さんで」

言いながら、じわりと瞳に涙が浮かぶ。

本当は、不安になっている場合じゃない。この子のために動き出さなきゃって頭ではわかっている。だけど……。

「私……っ、たった一人で、どうしたらいいの……?」

ドアに背を預け、ずるずる床に座り込みながら頼りなく呟く。

姉のような優しさもなく、家事もろくにできない、今まで自分のために好き勝手生きてきた私が、母親になる? 育児なんてできるの? ちゃんと、この子を不幸にしない自信がある……?

自問自答を繰り返しても、心細さが増すだけで何の解決策も浮かばない。

そんな不毛な時間を、どれくらい過ごした頃だろうか。再びこの部屋に誰かの足音が近づいてきて、ドアの前で立ち止まる。

きっと姉が心配しているのだ。いい加減、顔くらい見せないと……。



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