熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~

「恋人を南雲家に奪われてしまったお父さんはすごく落ち込んだらしいんだけど、それを支えたのが、お父さんとずっと女友達であった私たちのお母さんだったそうよ。お母さんは、桔平さんのこともすべて知っていて、そのうえでお父さんを愛したの。そして、私たちが生まれた」

「そう、だったんだ……」

両親の馴れ初めなんて今まで聞いたことがなかったけれど、そんなドラマチックな物語があったんだ……。

「だから、不思議な縁よね。こうして詩織と梗一さんが出会って、新しい命も授かったなんて」

「えっ。お姉ちゃん、それ……」

ぽつりと姉が呟いた言葉に、私は戸惑いを隠せない。だって、妊娠のことはまだ梗一にしか話していないのに……。

「あ、ごめん。俺が言っちゃった。可愛い妹のオメデタイ話がうれしくて」

「先生……。もう、自分で言おうと思ってたのに」

口をとがらせて拗ねる私に、先生は小首をかしげて困ったように笑う。

「だって、本当に可愛いんだもん詩織。高校時代、熱心に絵を見てやったのは妹だと知っていたからだけど、あの告白にはキュンときたよ。絶対ほかの男に渡すもんかって思った」

「えっ? なに詩織、桔平さんに告白してたの!?」

恥ずかしい話をいきなり暴露され、しかもそれに色めき立って食いつく姉に、顔が熱くなる。

そんな昔の話を、なぜ今この状況でバラすのこの人は……!

実は自分でも、〝あの時の私ってまさか血の繋がった相手に告白していたの……!?〟と気づいて、さっきから軽いパニックだったのに。


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