熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
第六章

・友人として


――詩織が姿を消した。俺にも、兄にも、そしてあれほど頼りにしていたお姉さんにも行き先を告げずに、あの家からいなくなった。携帯の電話番号は変えられ、連絡を取る手段もない。

お姉さんに見せてもらった置手紙によると、詩織は子どもをひとりで産んで育てる気なのだという。

ショックだった。詩織が俺になんの相談もせず、そんなに大きな決断をしたことが。

……俺はそんなにも頼りない男だったのだろうか。それとも、いつもそばにいられない距離に耐えられなかった? ……いや。前日に電話した時にはそんな雰囲気ではなかった。

会えない寂しさはもちろんあっただろうけれど、決して悲観的ではなく、次に会う日を心待ちにしている様子で……あれは、強がっていただけなのだろうか。

すぐに彼女を捜しに行きたかったが、夏に休暇を取ってからそれほど時間の経ってないこのタイミングで仕事を放り出すわけにもいかなかった。

そして、煩悶とすること数日。スカーフとサングラスで顔を隠した優良が会社を訪れ、ようやく詩織が姿を消した理由がわかった。



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