熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~

「副社長……」

「最近の優良は一段と輝きが増して、人気も少しずつ上がってきただろう。そこに目をつけられて、変な業界人にかっさらわれてもいいのか?」

挑発するようなことを言う俺に、三島は眉根を寄せ一瞬迷う素振りを見せたが、すぐに顔を上げてハッキリと告げる。

「嫌です。……今度こそ、俺の手で彼女を幸せにしたい」

「なら今日はもう上がってすぐに彼女に連絡しろ。俺なんか想い人の連絡先すらわからない状態なのに、まだ諦めてないんだからな」

苦笑しながらそう言い残し、今度こそ副社長を出て行こうとすると。

「ありがとうございました……!」

三島が今一度深々と俺に頭を下げたので、俺は「大げさだよ」と軽く笑い、副社長室を後にした。


ぎりぎり19時前にギャラリーに到着し、入り口付近の外壁に貼られたポスターを見ると、現在展示しているのはさまざまな日本人アーティストの油絵なのだそう。

詩織の絵は間違いなくその条件に合致する。とうとう彼女の新作が見られるのだ……。

緊張で武者震いしそうになりながらも中に入り、チケットを買い求めるとゆっくりと展示室へ入っていった。

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