熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~

美大を卒業した後も、夢中になっているときは寝食も忘れるほど、一心不乱にキャンバスと向き合う日々を重ねて数年。

ありがたいことに、絵だけで食べていけるくらいには名前が売れ、今では日本だけでなく海外の美術館にも作品を飾ってもらえるようになった。

私が好んで絵のモチーフにするのは、花から花へひらひらと舞う蝶。

美しい羽に同じ模様はひとつとしてないと言われていて、表面に纏った鱗粉が、太陽や月の光を映していくつにも色を変える。その神秘的な姿が私を惹きつけてやまない。

なかでも美しいのはやはり南国にいる蝶で、その色彩の豊かさをどうしても絵で表現したかった私は、アトリエを日本からタイの離島へと移した。

生活必需品を市街地で調達する以外は、森や水辺で蝶を観察するか、人里離れたコテージにこもって絵を描くだけの毎日。

当然色恋沙汰が起きるわけもないし、私はこうして死ぬまで絵を描き続け、寿命をまっとうするのだろう。

二十六歳にして、そんなある種の悟りを開いていた私の前に、突然現れたのが彼だった。

< 2 / 181 >

この作品をシェア

pagetop