熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~

洗面所でタオルを濡らして戻ってきた私は、それを彼の額に乗せながら尋ねた。

「お言葉に甘えて休ませてもらおうかな。隣、いい?」

「俺は構わないが……詩織はうつったら困るだろう」

戸惑う梗一を無視して、私は布団を捲ってベッドに入ると彼にピタリと寄り添った。

「わ。熱い」

驚いていると、梗一がこちらに寝返りを打って、熱い吐息をこぼしながら話す。

「……なのに寒気が止まらないんだから、やっぱりおかしいよな。でも、詩織がきてくれたからあたたかい」

「うん。早くよくなるといいわね」

布団の中で彼の手を取り、優しく握る。梗一は困ったように微笑んで、もどかしそうに言った。

「キスくらいしたいが……今夜は遠慮しなきゃな」

どうやらまだ私への感染を気にしているらしい。一緒のベッドで寝てしまう時点で、もうそんなの無意味だと思うんだけど。

「……いいわよ別に。うつったらそのときはそのときよ」

「でも」

「もう、変なところで真面目なんだから……」

私は苦笑いして、自分からそっと彼の唇へキスをした。不意を突かれて目を丸くする梗一に、私はしたり顔を作ってみせる。

「いつも、私が何度嫌だって言ってもやめてくれないから、そのお返しよ」


< 74 / 181 >

この作品をシェア

pagetop