ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
部屋を飛び出そうとすると、彼と入れ違いにやって来たお父様が道を塞いだ。

「イリス、落ち着きなさい」

「お父様退いて下さい、レオンが……」

「レオン様はこの村を出る」

「知ってます。だから早く追いかけないと」

「駄目だ。私から事情を説明するから座りなさい」

お父様は私の部屋に設えられた小さなソファーに目を向ける。

その態度は冷静で、この突然の出来事の理由を全て知っているのだと分かった。

けれど今は一亥も早くレオンを追いたい。お父様ではなく彼本人から事情を聞きたい。

そんな私の気持ちを察したようにお父様が言った。

「レオン様は今とても危険な立場に置かれている。無事を願うなら追ってはいけない。イリスに出来るのはこの場で大人しくしていることだけだ」

「危険って?……何が起きているの? 私が追いかけたらレオンはもっと大変なことになるの?」

「そうだ。足手まといになりたくないなら座って私の話を聞きなさい」

そんな言い方をされたら、もうあとを追うことなんて出来ない。

私のせいでレオンが危なくなるなんて絶対に嫌。

だけど、どうして突然こんなことに?

何も分からないまま、私は力なくソファーに腰を下ろした。

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