ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
「ママ、またあめなの?」

窓からうす暗い景色を眺めて、リラががっかりした様子で眉を下げた。

私も外をなんとなく眺めながら答える。

「最近、雨が多いね」

「うん、つまらないな、おそといきたい」

リラはぷっくりしたほっぺたに手を当てると、はあと溜息を吐いた。

頬杖をつくその様子は愛らしく、私はくすりと笑いながら言った。

「町には行けないけど、病院の中庭を散歩してみようか?」

「うん! いきたい!」

この数日、部屋と病院の往復だけだったことにストレスが溜まっていたのか、リラは輝くような笑顔になる。

私は頷くと、手早く外出の支度を始めた。レオンに買って貰った雨具をリラに着せ、傘を持つ。

「少しだけだよ」

リラを連れて外に出る。

特に何かが有る訳じゃないけれど、リラは楽しそうに外の空気を味わいながら中庭にとことこと向かって行く。

病院の中庭は緑の樹々が植えてある。サラサラと降る雨を避けるように木の下に入り、リラの様子を見守った。

よく言い聞かせてあった為か、雨具のフードをしっかりと被り、散歩をしている。

花壇の花を眺めていたリラは、思い出したように振り返り、私の元へチョコチョコと走り寄って来た。

「ママ、きれーなおはながあったよ。もらってもいい?」

「そこのお花は勝手に取っては駄目よ。病院の人が大事に育てている花だから」

「そっか……」

リラはしゅんとして俯く。

「あのお花が欲しいの? 今度町のお花屋さんに見に行こうか」

そう言ってみたけれどリラは首を横に振る。

「リラはいらない……レオンにあげたかったの」

「レオンに?」

私は少し驚きながらリラを見つめる。

「うん、レオンにきれーなおはな、みせたいから」

「そう……リラは優しいのね」

「うん、いつかえってくるのかな?」

リラは、コテンと首を傾げる。

「そろそろ帰って来ると思う。リラはレオンが好きなのね」

「うん。レオン、いろんなおはなししてくれるから。ママのつぎにすき」

嬉しそうに笑うリラを見ながら、再会してからのふたりの様子を思い出した。

リラは初めて会うレオンに警戒していたけれど、直ぐに興味が上回ったのか、自分から近づき話しかけていた。

レオンはぎこちないながらもリラの質問に答え、気が付けば自らリラにいろいろな知識を教えるようになっていた。

私からは聞けないような話も多く、リラは興味深そうに話を聞いていた。

血がつながっているからなのか、もともとの性格が似ているからなのかは分からない。

だけどいつの間にか、レオンとリラの間には絆が出来ていたんだ。

切なさがこみ上げる。黙ったままの私に、リラが首を傾げて言う。

「ママもレオンが好きでしょ?」

「え……どうして?」

「ママ、いつもレオン、みてるよ」

幼子の鋭い指摘に、動揺してしまう。

「ママもレオンがすきでしょう? リラといっしょね」

ニコニコと言うリラ。

「……そうだね」

私はリラの柔らかな髪をそっと撫でた。

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