その瞳に私を写して
普通だったらこんな時、『久しぶり、元気だった~?』なんて言うんだろうか。

だけどこの時の麻奈は、そんな事思いつかなかった。


「何で ここにいるの?」

うわっ 嫌な女!

麻奈は、自分で思った。


「ここで?散歩ですかねぇ。」

「いや、そういうここじゃなくて!」

麻奈は、思わず大きな声を出してしまった。

「NYでよ。」


だがそんな事おかまいなしに、彼は笑顔だ。

「NYで、写真撮ってるんです。」

写真?

写真??

もう一つおまけに、写真???


「俺、写真家なんですよ!」

そう言って彼は、クシャっと笑った。

28歳にもなると、年下の男の子のクシャっとした笑顔を、かわいいと思うらしいが、麻奈はそれどころじゃなかった。


正也のいない生活に、慣れようとしていた。

正也の事を、もう忘れようと決意した。


なのに、正也の事をよく知る人。

しかも正也と同じ写真家と、麻奈は出会ってしまった。

今一番、出会いたくない人に。

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