その瞳に私を写して
「まだ、帰ってないのか~。」

ホテルから出て、真上を見上げる麻奈。

ホテルの各部屋に着く明かり。

その一つ一つに、人生があるような気がした。


そして当てもなく麻奈は、トボトボと歩きだした。

街には、ネオンが光輝いている。

すれ違う人の手には、恋人へのプレゼントがあった。

家族へのクリスマスケーキを持っている人もいる。


「今日、クリスマスだったんだ。」

麻奈は、今年だけはクリスマスに、縁がないと思っていた。

だから、今の今まで忘れていたのだ。


麻奈はふと、足を止めた。

お店のショーウィンドウに、勇平に似合いそうな服が飾ってあった。

麻奈は何の気なしに、そのお店に入ってみた。


「いらっしゃいませ。」

店の人が、麻奈に近づいた。

「ああ……表のショーウィンドウに飾ってある服を、見せて貰いたいんですが。」

「お待ちくださいね。」

麻奈は、勇平の服のサイズなんて知らない。
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