潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
ふふ…と頭の中で笑い、唇の端を緩ませたら、彼は思いがけず同じ様な言葉を囁いた。


「このままずっと、同じ職場に出勤できるといいんだけどな」


「え?」と胸が弾み、思わず顔を窺ったが__


「…まあ、そういう訳にもいかないか…」


諦めたように肩を落とす相手の声が低まり、こっちとしても、まあそうよね…と気が沈む。

越智さんはきっと出向を認めて貰えただけでもラッキーな立場の職種で、本来なら彼の部下が来るような事を、自ら望んでやっているんだろうから。


(それも私がどんな人間か興味を持って、わざわざ会う為に来たんだ)


越智さんの横顔を窺いながら、私と会って何か価値はあったんだろうか…と思ってしまう。

彼のように、本来は潜入なんてしなくてもいい感じの人が、わざわざ会って為になったんならいいけど……。



「ああ、そう言えば」


急に彼に大迷惑をかけたことを思い出し、私は、あの時のホテル代…と声を発した。


「ごめんなさい、ずっと忘れてました」


今週はそんなに忙しくなかったのに、うっかり忘れてしまうところだった。


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