潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
二人のオムライスに、お互いのことを思い遣るような願いを描いたのもそれで。
素直になって、一緒に住んでもいいよ、と伝えたかったの」


少なくとも、母にはそれが伝わった気がする…と香純は続け、俺は薄っすら涙ぐんでいた彼女の母親の横顔を思い出して頷いた。



「ああ、そうだな」


納得するように首を縦に振ったが、それじゃ俺のオムライスに描かれたあのハートマークの意味は何だ?と気になる。

こっちはてっきりそのままの意味に捉えていたが、ひょっとするとあれも、親を安心させたい為のメッセージの一つか?


(俺にお父さんの迎えを願ったのも、自分が自立しているとアピールする為か?…いや、香純がそんなことの為に俺を使う筈が……)


そう思うが、あまり自信がないのは何故だ。
別れ際には、あんなにハッキリと「離さない」と宣言までされたのに__。



「香純」


名前を呼びながら路肩に車を寄せて停めた。

彼女は「どうしたの?」と驚いた様子だったが、ブレーキを引いた俺が神妙そうな顔でいるのに気づいたらしく、キョトンとして瞬きを繰り返した。


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