潜入恋愛 ～研修社員は副社長！？～

「研修先で何があったのかは知らないけど、ミスをしないよう気をつけた方がいいわ。越智君はもう上の立場の人間なんだし、現場に関わる仕事も、そろそろ各部署へ引き渡した方がいいんじゃないの！？」


その方が自分もスケジュール管理がし易くて助かるんだけど…と言う武田は、前の部署でも俺の仕事の補佐をしていた。


その縁があり、俺が副社長に昇格した時、武田も一緒に秘書として迎え入れた。
日頃の彼女はこんな無駄口など聞かず、余計なことも滅多と言わない性格なんだが＿＿。



「何だ？やけに機嫌が悪いな」


アノ日か？と疑いたくなってくるが、どうもそれだけとは思い難いような様子だ。


「そんなことない。越智君の気のせいよ」


ちゃんと仕事して…と言うと自分のパソコンへと向き直る。
その目はディスプレイを捉えているが、表情はムッとしたままで、何だか怒っているようにしか思えない。



（何だよ、あれ）


彼氏とケンカでもしたのか？と別の理由を考えだし、ああそれであんな顔か…と納得がいく。



（それで俺にとばっちりか？解せないな）