潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
少しムッとするような雰囲気の声に感じ、ああ、どうぞ…と答えた。
彼が居たことも忘れて仕事に没頭していたのがいけなかったのかも…と反省もして、社食を利用されてもいいですよ、と教えた。


「私のオススメは、此処の商品で作るオリジナルの日替り定食なんですけど」


でも、今日は食べたくないから一人で利用して欲しいつもりで言うと、彼は無言で頷きだけ返して席を離れて行く。



「…ほんっと愛想ない」


態度少しデカいし、何様なの?と思いつつもデスクに伏せて溜息を吐く。
お腹が空いてない訳でもないけど、喉を通りそうになくて息だけを吸い込んだ。



「思っている以上に、やっぱりダメージ大きいな…」


たった一年しか付き合ってなかったのにな…と思いながらも、そうそう簡単に割り切れたりしない。今、この瞬間にも智司に連絡を取って、もう一度話をしたいと願いたくなってくる。



「諦め悪い。私…」


声を漏らすと涙が零れ落ちそうになる。
けれど、デスクを失恋の涙で濡らすのが嫌で起き上がり、ぐいっと目元を擦って給湯室に向かった。


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