命令恋愛
『俺たち、もう別れよう』


京太がそう言ったのは、あたしがクッキーを取り出すために鞄を開けた瞬間だった。


あたしはカバンのファスナーに手をかけたまま、硬直してしまった。


『え、なに?』


目をパチクリさせて聞き返す。


最初はあたしの空耳だと思った。


騒ぐ子供たちの声と、京太の声が混ざって妙な言葉に聞こえてしまったのだと。


でも、違った。


『別れよう』


そう言った時の京太の顔は、眉間にシワを寄せて本当に嫌そうに見えた。


それでも、あたしはすぐには信じられなかった。


だってあたしと京太は今まで大きな喧嘩もなく、順調に付き合っていた。


なにせまだ付き合って一か月なのだ。
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