この想いを言葉にのせて
二文字



side : Michiru


「ねえ、パンダ」
「なに?」
「パンダって甘いもの好き?」
「うん、嫌いじゃないよ」
「そうじゃなくて、好きかどうか聞いてるの~」
「だから、嫌いじゃないよ」
「………」


 パンダの口から『好き』の二文字を出すのは至難の技だ。





 校門から校舎に繋がる長い道もグラウンドも今日は校内全部が学園祭一色で染まっている。
 軽音部の部室内には私とパンダの2人だけの空間が広がっていた。私にとってはこれ以上なく嬉しいけれど、パンダはどう思っているんだろう。
 チラリと横目で窓際に視線を向けると、窓枠に頬杖をつくパンダの姿があった。小動物のような丸い瞳が空を真っ直ぐに見つめている。ふわふわで色素の薄い髪が秋の風に揺れた。


「ねえ、パンダ」
「なに」
「………」


 私のこと、好き?そんな事を聞いたら、パンダは何て言うのかな。口を開いて言葉にしようとした瞬間、部室のドアが開いた。


「おーい!ミッチャン、パンダ!お土産買ってきたよ!」


 入ってきたのはサクタ部長だった。その手には大量の食べ物が抱えられている。


「うわ、どんだけ買ってきたんですか!」


 慌てて駆け寄り、荷物を半分ほど受け取った。


「だってせっかくの学園祭なのに楽しまなきゃ損でしょ?ミッチャンとパンダにも楽しんで欲しくて色々買ってきちゃった!」


 そう言ってサクタ部長は子供のような無邪気な笑顔で買ってきたものを一つ一つ教えてくれた。


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