この想いを言葉にのせて



 目の前を歩くいちごみるくの女の子の背中を何となく見つめて歩いていると。


「サクタぶちょー!」


 後ろから耳をつんざく大声が聞こえてきた。その声にいちごみるくの女の子がスカートを翻して振り向いた。
 艶やかな黒髪を片耳にかけて、後ろにいた僕と目の合った彼女は一瞬驚いたように目をパチクリとさせた。


「あっ、もしかして君、一年生?」


 美人な顔つきからは想像のつかない気さくな態度で声をかけてきた彼女に思わず頷く。


「部活は?どこかに入る予定だったりする?」
「……いえ、特には」
「そっかそっか!それじゃあ良かったら軽音部入らない?あ!私軽音部の部長してるんだけどね、気が向いたら部室においで」


 そう言っていちごみるくの先輩はかばんの中から紙を出して渡してきた。


「部長?どうしたんです~?」


 後ろから聞こえてきたあの高い声の持ち主だと思われる女の子が僕を見て不思議そうに問いかけた。


「ううん、ちょっとね、えっと……何くん?」
「クマタニ……です」
「うん、クマタニくんね、覚えた!」
「あの、先輩……」
「ん?どうしたのクマタニくん」
「先輩からいちごみるくの匂いがします」
「えっ、うそ!?うわー恥ずかしい……」


 そう言って先輩はもう片方の手に持っていたコンビニ袋を僕に差し出してきた。


「間違って二本買っちゃってさっき急いで飲んだんだけど、もう一本貰ってくれない?」
「え、いいんですか?」
「私あんまり甘いの得意じゃないから、貰ってくれると助かるな」


 恥ずかしそうに顔を赤らめる先輩から袋を受け取った。近づいた先輩からはやっぱりいちごみるくの甘い匂いがした。
 でも、それと一緒に別の匂いもした。


「ありがと!また放課後会おうね」


 そう言って先輩ともう一人の女の子は僕から背を向けて歩き出した。


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