はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
「まあ、そうね。私も忠告したけど、好きになってしまったのなら仕方ないし、それでうまくいってるなら良かったなと思っていたけど」

「うん、……ダメだった」


彩音には家柄的に合わないと言われた。その時、私は好きにならないようにしようとした。だけど、好きにならないようにするのは難しかった。彼を見ると心が弾んでしまっていたから。

もっとがんばれば、なんとか一緒にいられる方法を見出だせたのかな?と別れたことを後悔することは時々ある。

でも、短い間だったけど、付き合ったことを後悔していない。今までにない幸せな時間を過ごせたから。


「すぐに嫌いにはなれないけど、諦めることで徐々に気持ちは薄れていくと思うの」

「支配人を見る時の嬉しそうにする藍果に私まで嬉しくなっていたから、なんか残念だけど」

「えっ、私嬉しそうな顔していた?」

「うん。藍果はいつも落ち着いているから、他の人には分かりにくいかもしれないけど、私には分かったよ。微かにこの辺が緩んでた」


彩音は私の口の端をつつく。なるほど、この辺か。彩音に気付かれるくらいなら、玲司さんも気付いていたかも。

今もたまに玲司さんの姿を見る。遠くにいても、彼の姿は分かる。でも、今は見るたびに心が苦しくなる。
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