はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
「私のこと、覚えていますか?」

「え? 横川藍果さんだよね? 今言ったばかりだけど?」


私の聞き方が分かりにくかった。支配人はなぜまた聞くのだろうかと不思議そうに首を傾げた。


「すみません、違うんです。昨日、今日のことではなくて七年前のことなんです」

「七年前? 七年前に俺たちが会っていると?」

「はい、札幌のホテルでなんですけど」

「札幌で? 確かに……七年前は俺札幌にいたけど、もしかしたお客様としてホテルに来てたのかな?」


私が頷くと、支配人は顎に手を当てた。記憶を呼び起こしているようだ。私は覚えていて欲しいと期待を込めて、支配人を見た。


「申し訳ないけど、さすがにそこまでの記憶はなくて」

「そうですよね。でも、実は……」

「すみません、お待たせしました。支配人、予定通りに先方がお会いになるそうなので行きましょう」


一緒に写っている写真をバッグから取り出そうとしたけれど、戻ってきた人事部長に遮られてしまう。
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