はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
彩音はそのときの気持ちを思い出したのか目を潤ませたが、時折外を見ながら話を続けた。


「振られたんだけど、もし偶然という奇跡が起きるんじゃないかなと思っていたの。だって、ふたりで願ったから」


縁があれば、また会えると奇跡が起きるようにふたりで願ったという。

ロマンチックな話にも聞こえるが、願いが叶っていないから切ない話に聞こえる。

でも、彩音が上京してからまた二か月も経っていない。


「まだ可能性はあるんじゃない?」

「そうなのかなー。でもさ、こうやって見ていても知らない人ばかりだし、二度と会うことのない人ばかりじゃない?」

「確かに……」


可能性はゼロではないにしても、絶対会えると断言出来ない。声が徐々に小さくなっていく彩音を元気付けたいけど、難しい。

歩いていたら、いろんな人とすれ違う。みんな知らない人ばかりで、同じ人とまたすれ違うことがあるとしたら、それは同じような生活時間の人の可能性が多い。

彩音が会いたいと願う人は東京のどこに住んでいるか分からない。


「ひとつ年上だというと、働いているんだよね? 就職先は聞いていないの?」
< 67 / 168 >

この作品をシェア

pagetop