はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
あの夜の出来事は夢か幻かと思うこともある。またふたりだけで話をしたいと願うが、簡単に願いは叶わない。


「願いは叶わないものよね」

「えっ?」


私の思っていたことを彩音が頬杖をつきながら、言うからビックリした。彩音って、エスパーなの?

しかし、彩音は私のことを言ったのではなかった。


「藍果にはまだ話してなかったよね? 私、ある人に会いたくて東京に出てきたの。でも、東京って、本当に人が多いよね。こんな中で偶然会うなんて無理な話」

「会いたいなら連絡取ればいいんじゃないの? 名前を知らない人なの?」


私は、名前も知らなかった支配人に偶然会えた。彩音がどんな人に会いたいのかは分からないけど、連絡先が分かるなら連絡したらいいのではないだろうか。


「名前は知っている。二年前の夏にうちのペンションにバイトで来てた人なの」

「従業員として働いていたなら、連絡先は分かるんじゃないの?」

「んー、親は知っていると思うけど、個人情報だから教えてくれないというか、その人に告白して断られたから無理なんだけどね」
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