俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「下」
「ハハッ!苦しいだろ?もっと苦しめばいい!!」

ジャックを見れば、俺を見下すように笑っている。俺はただクリスタルの止血をするしかできない。ジャックを逮捕することも、クリスタルを助けることもできない無力な自分が悔しくて仕方がない。

「リーバス!!リーさんが来たぜ!」

レムがそう言った刹那、「クリスタル!すぐに応急処置をするネ!!」とリーがかばんから包帯などを取り出し始めた。レムが呼んできてくれたらしい。

「リーバス!お前も後で手当てするヨ!」

リーがそう言うが、俺は首を横に振る。

「俺はいい。…クリスタルを……クリスタルを助けてくれッ!!」

クリスタルの思い出が蘇る。笑顔も、泣き顔も、キスした時のことも、デートした時のことも……。

もうジャックとの勝負なんてどうでもいい。クリスタルが助かるのなら、俺は何だって捨てよう。何だって奪っていけばいい。クリスタルのたった一つしかない命が助かるのなら、俺は何もいらないんだ。

後ろにジャックがいるというのに、俺は剣を地面に捨て、リーの処置を眺めていた。
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