俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「下」
「……生まれた?」

クリスタルがシンファさんに訊ねる。俺も、シンファさんを見つめた。

シンファさんの黒い目が、喜びであふれる。赤ちゃんをそっとクリスタルに渡した。

「おめでとうごさいマス!元気な男の子デス!」

クリスタルの目から涙が流れていく。俺も、息子の顔を見て涙があふれてきた。

「……クリスタル、ありがとう。この子を産んでくれて…。やっと、会えたな」

息子の小さな手に指を近づける。生まれたばかりの息子は、俺の手をそっと握った。



その夜、息子を抱っこした。温かくて小さい。十年ほど前は、俺やクリスタルもこんな赤ちゃんだったのかと思うと、少し不思議な気持ちだ。

「かわいいね」

クリスタルが息子をそっと撫でる。

「ああ。とても、かわいい」

俺たちは、息子に「バロン」と名付けた。
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