あかいろのしずく
カップが地面に落ちて、中からコーヒーがこぼれます。まだ図書館の敷地内。二センチほどの長さで切りそろえられた芝の上に、茶色い液体が染みていきます。

純を抱きしめて、流れ出るそれを見つめながら思いました。




今になってようやく気付いたなんて、言えなかったと。



純に「結婚したい」と言われて刹那、僕の中には嬉しさやら喜びやら寂しさやら悲しさやら。焦りやら恐怖やら。色んな感情が生まれました。

ちょっと分かりにくいから言い換えると、とりあえず、混乱したのです。



それで逆に冷静になれたのかもしれません。


例えば「好き」という感情はどうだろう。
こんなことは言いたくないけれど、職業柄この恋はあまり良いものではない。

僕から突き放すべきであって、喜んでいる場合じゃない。
そう思う一面があるから、少し気が引けているのではないのか。


僕の「好き」は足りないんじゃないだろうか?
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