あかいろのしずく
「婚姻届だって出せるんでしょ? 先生さえよければ大丈夫よ」
はらはらと、頭上から小さな粒が落ちてきました。
触れるとあっという間に消えてしまう、柔らかくて優しくて、どこかはかない白い粒でした。
赤いチェックのマフラーを首に巻いて、白い息を吐きながら、ゆっくりとくるりとその場で回って見せます。
カフェオレ色の薄めのコートがふわりと揺れて、小さな白い粒たちを巻き込んで。純は言いました。
「それに先生、本当はわたしのこと、」
瞳が潤んでいました。
ゆらゆらと揺れていました。
どうしてそんな悲しい目をするのか、僕にはさっぱりでした。でも、この先を決して彼女に言わせるわけにはいけないと思ったのです。だから咄嗟に、でした。
僕は純を覆い隠すように、抱きしめました。