あかいろのしずく

柔らかい笑みを頬に浮かべた男性。


眼鏡が無くても分かる。目にかかる前髪、似合わないスーツ姿。その声も、その容姿も、名前も全部知っている。


だって昨日、私と彼は会ったんだから。




「先生......?」



無意識のうちに、声が漏れていた。



先生は座っている私の方に目を向けると、もう一度笑顔を作って見せた。




「おはようございます、ナナカさん。昨夜はよく眠れましたか?」

「先生が、私達をここに?」

「聞き返さないでくださいよ。僕が聞いているのに」
< 195 / 754 >

この作品をシェア

pagetop