あかいろのしずく
どうしたら、いいんだろう。
「サユリ先輩、ドア越しだったら聞こえてますよね? この会話」
「あ、そういえばそうね、声小さくしないと」
「バカですね、もう遅いですよ」
ショウトが笑っている。楽しそう。
サユリさんもつられて笑う。二人は仲良しのようだ。
まるであの日のこと。あの女の子のこと。今の現状を忘れているように見える。
こんな時でも笑顔でいられるのは、尊敬するなあと思った。
忘れられたら幸せなんだろうか。
あの日あの教室にいなかったら、こんなことには......。