あかいろのしずく
二人が黙っても、ぐるぐると思考が巡る。



ここにいることを楽しむべきなんだろうか。二人みたいに。
そうすればいつか、嫌な記憶もきれいさっぱり忘れられるだろうか。


ガタガタと窓が風に揺れて、また二人が「びっくりした」「そうですね」なんて会話を交わす。その様子にはどこか惹かれるものがあって、私もその会話に混ぜてもらおうかと思った。



そして、案外ここで暮らすのも悪くないと、ショウトが笑って言ったその時。








「ナナカ」







一際目立つ声で、彼が私の名前を呼んだ。


笑いあっていたサユリさんもショウトもそれで会話を止めて、私と同じ、
アズマのいる方向に視線を向ける。
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