あかいろのしずく
が、


そこまで揺れていなかったようです。


私の手がその腕に触れるや否や、何か触れてはいけないものに触れてしまったような顔をして私の手を振り払うアズマ。


よほど触られたのが嫌だったらしい。バッ!と私の方に勢いよく振り向くのはいいが、その顔といったらもう真っ青で。


せめて恥ずかしそうに顔を赤くしていたらよかったけど、現実はそこまで甘くはない。「大丈夫?」と聞くつもりでいた私だったが、私もそれにショックを受けて、咄嗟に



「すみません」



と謝ってしまった。



その後、アズマは無言で部屋を後にした。
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