あかいろのしずく

辛かったんじゃ、ないだろうか。

私達の気づかない間に、どこかで蹲っていたかもしれない。
私達の知らない間に、何度もあの事件の夢を見たのかもしれない。


その度に痛みも苦しみも殺してきたんだろうか。
アズマは、そこまでして私達に言いたくなかったんだろうか。




俯くと視界が揺れた。足元が酷くぐらぐらした。





「案外平気な風に振る舞っていましたね。心配かけたくなかったんでしょう」




別に頼ってほしかったわけじゃない。




「ナナカ先輩」

「......大丈夫」




涙を拭って呟く。

それでも雫はどんどんこぼれてきて、私は顔を両手で覆ってすすり泣いた。





ああ。

違う。


本当は。
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