あかいろのしずく

そしたらアズマは目を覚まして、私達はいい雰囲気になりながら、話は出ようという方向には進んでいたのだけれど、突然上から屋根が落ちてきて二人は下敷きになった、と。


私は捻挫やら打撲やら足の骨にひびが入るやら色々あって、入院期間もなかなか長かった。リハビリもしたし最初はもう体中負傷して痛かったけど、今では学校も通っているし、まだ治っていないのは左腕だけである。

それも治りつつあるのだけれど。



「あ、そうだこれ、預かりものです」



さゆりさんが私に、白い小さな封筒を渡してきた。
それはよく見覚えがあった。



「......はい。ありがとうございます」



そう言って受け取り胸ポケットにしまうと、さゆりさんが俯いて、呟くように言った。




「なんか、最後の卒業式の日まで、気遣わせちゃうんだね」

「え?」

「ホントはやっぱり、アズマがここにいたら一番良かったんだろうね、ごめん」
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