あかいろのしずく

「じゃあ、うちら行きますね」

「うん。祥人くん頑張ってね」



私が苦笑いして言うと、祥人は「はい」とくぐもった声で返した。顔から手を外すと、再び祥人の制服の裾を持って紗季が引っ張っていく形に。



「ほら、ちゃっちゃと歩きな。いつまでめそめそしとんねん」

「......うるさいな」

「女に向かってうるさいとか言わんといてください。そやからフラれるんや」

「違うよ向こうに彼氏がいたんだよ!」



仲良しだなあ。


傍から見ればカップルなのにな、とぼんやり思う。紗季が振り返って「ばいばいです」と笑った。私も同じように返した。

祥人は仕方がないけど、紗季にはまだチャンスがあるんだよね。いつか一緒にいたら、ちゃんと自分のことを見てくれる日が来るかもよ。


頑張ってね、紗季。
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