あかいろのしずく
純が不満そうに言います。


「本当にそれだけなの」


なんだ? まだ物足りないのか?
いたずらっぽく言った純に僕は聞き返します。


「どうして?」

「甘いセリフは吐けないんですか」

「例えば?」

「わたしのことが好きとか?」


純は少しもじもじしながら聞き返しました。
可愛いやつですね。純の顔は見えないけど、僕は笑ってしまいました。


「自分で言うんですね」


分かり切っていることを言う必要はないでしょう。
そう言うと何故か、思い切り背中を叩かれました。バランスを崩して倒れそうになり、「いっ」と思わず声が漏れます。


「先生のバカ! もういいです、地獄に落ちろです!」



酷いな!
純はそのまま怒った口調で「目開けて!」と言いました。
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