仮想現実の世界から理想の女が現れた時
暁里と外回りへ出た際の電車での移動中、暁里が切り出した。

「今日、田中君が契約取れたお祝いにみんなで
飲みに行くんですけど、一緒に来て
くれません?」

部内でキャッキャ騒いでたのを聞いていたんだから当然知ってはいるが、俺は素知らぬ顔で答える。

「営業が契約取るたびに飲み会してたら、
一年中、飲み会になるぞ?」

「そうなんですけど…
さっき、田中君に断ろうと思って、誘ったら、
契約取れるから遅くなるかもって言われて、
そんな日に断るのも申し訳なくて…

2人で出掛けるのも怖いし、桜たちを誘って
ごまかそうとしたら、なんか大ごとに
なっちゃって…」

暁里は申し訳なさそうに下を向く。

「で、なんで俺なんだ?
暁里のお目付役か?」

「違います。
桜が、金曜日、私が部長を連れて帰ったせいで
部長と話せなかったから、代わりに今日
連れて来いって…」

「つまり、俺は暁里に売られたんだ?
今日は、加藤と仲良く飲め…と?
暁里はそれでいいんだな?」

我ながら意地悪な言い方だと思う。
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