仮想現実の世界から理想の女が現れた時
「部長が狼になったら、どうすんだよ。」

田中が不機嫌そうに言う。

うんうん。
それに全く気づかない素直さが暁里のいいところなんだよ。

「田中君、分かってないなぁ。
部長は、狼じゃなくて、"鬼"さんだから、
大丈夫なの。」

「瀬名、飲み過ぎ。
もうやめとけ。
悪い、こいつ、限界だから、連れて帰る。」

俺は、暁里の腕を掴んで、立ち上がった。

すると、田中が暁里の反対の手を握る。

「酔った瀬名を送るのは、入社して以来、
俺の役目なんで、大丈夫です。」

田中の鋭い視線が一歩も引かない奴の決意を表していた。

「田中は、方向が反対だろ。
俺が送った方が効率がいい。」

「俺は!
反対方向でもずっと瀬名を送ってきたん
だから、気になりません。」

田中は、暁里の手を握って離さない。


そこへ

「ええ!?
俺も瀬名さん、送りたいです〜。」

と呑気な声で石原さんが割り込んできた。

こいつ、ほんとに空気を読むのが上手いな。

< 120 / 227 >

この作品をシェア

pagetop