仮想現実の世界から理想の女が現れた時
「佐久間さん、うちはこの通り、がさつで
大雑把な家です。
社長さんの家に嫁に出せるような教育はして
ません。
申し訳ありませんが、暁里とは」

「いえ!」

俺は、慌ててお父さんの言葉を遮る。

「私の両親は幼い頃に離婚しております。
十分な養育費は貰っていたようですが、母は
それを私の大学進学費用以外には使いません
でした。
ですから、私の生活水準は、おそらく瀬名さん
御一家よりずっと貧しかったですし、想像
なさっているような優雅で贅沢な暮らしは
した事がありません。
ご心配をされるような事はないと思います。」

そんなつまらない条件で暁里とのことを反対されたくはない。

「そうでしたか。
ご苦労されたんですね。」

お父さんがしみじみとおっしゃる。

「いえ、それが普通でしたから、苦労だとは
思ったことがありません。
ただ、こうして賑やかな食事に混ぜて
いただいて、初めて、こういう生活も
楽しかっただろうな…とは思います。」

そうしたら、俺も暁里みたいに明るく素直に育ってたかな。

「そう思っていただけたなら、嬉しいです。
また、いつでも遊びに来てください。」

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