ラブパッション
切ない片恋
気になって、頭から離れないことを言った人。
だけど、これまで二度会ったのはいつも偶然で、なんとかして会いたいと思っても、私は瀬名さんの連絡先を知らない。


キョウちゃんか葉子なら、LINE交換くらいしてるかと思ったのに、意外にも『それは教えてくれなかったんだよねー』という返事だった。
会って対していると軟派なくせに、意外と硬派な一面を覗かせる瀬名さんという人は、やっぱり私にはイマイチ掴みどころがない。


万事休す……かと思ったけど、優さんも言っていた通り東京は狭い街で、三度目の偶然はわりとすぐに訪れてくれた。


六月中旬。
東京に、ほぼ平年並みの梅雨入りが宣言されたその日。
昼を過ぎた頃から空は厚い雲に覆われ、夕刻には狭くグレー一色の街に、ザアッと雨が降り出した。
デスクで長瀬さんが持ち帰った仕事を進めていた私は、雨音を聞いてぼんやりと頬杖をついた。


今朝、少し寝坊して急いで出てきたせいで、傘を持ってくるのを忘れてしまった。
目線を窓の外に動かし、雨脚を確認する。
終業時間までもってくれたらいいな、と思っていたけど、残念ながら無理だった。
少し残業したら、帰る頃には弱まってくれるかな……。
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