ラブパッション
マンションに帰り着いた途端、言いようのない孤独に襲われた。
東京での生活が始まって、もうすぐ二ヵ月になる。
なのに、狭い部屋で一人きりで過ごす夜の寂しさは、いつまで経っても慣れない。
溶け込んでしまいそうな温もりと熱を知ってしまった身体は、『終わり』を迎えた今もなお、彼を求めて震える。


求めちゃいけない。
寂しがっちゃいけない。
私が優さんを想っていては、彼を一層苦しめるのだ。
あんなに苦しそうに『辛い』と言われてしまっては、これ以上我儘に突き進むのは、私のエゴにしかならない。


それなのに。
目を閉じても、耳を塞いでも、呼吸を止めても。
私の五感は、惑うことなくまっすぐにベクトルを定める。


――優さん。


自分でも制御不能な恋心は、いったいどこから来るのか。
きゅんと疼く胸をぎゅっと手で押さえた時、私の脳裏に優さんの言葉が過った。


『玲子との関係から、解放されようなんて思ってない』

「解放……」


その言葉を、私は無意識に独り言ちていた。
優さん自身は諦めている『解放』。


でも、それとはまったく別のニュアンスで、私に焚きつけた人がいる。
そう、最初にその言葉を手向けた瀬名さんは、私に彼を溺れさせろと言った。


あの人は、玲子さんの『恋人』だから、彼の言葉をまんま信用するのは危険かもしれない。
でも、もしかしたら、そこに救いがあるかもしれない。


破れかぶれになってもいい。
この恋で、私にまだできることがあるのなら。
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