ラブパッション
Endless Night
春の訪れを思わせる暖かい日が何日か続いた後。
今日は晴れの日だというのに、朝からあいにくの曇り空。
季節が逆戻りしてしまったかのような肌寒さで、出かける支度をしながら、何度も窓の外の空を見上げてしまう。


「……雪、降るのかな」


今朝目が覚めてすぐ点けたテレビでは、東京に雪の天気予報が出ていた。
なんとなく溜め息をついた時、寝室のドアが開いた。


「夏帆。支度、できたか?」


あまり見慣れない、すっきりとソフトなオールバックにセットした髪。
フォーマルなブラックスーツに、白いネクタイ。
袖のボタンを留めながら出てきた優さんに、私の胸がドキンと跳ねた。


「も、もうちょっと……」


お約束で見惚れてしまったのを誤魔化し、私は手元の鏡を覗き込む。
メイクの仕上がりを確認してから、最後に急いで口紅を塗った。


ふうっと息をついてから、肩口で揺れる髪をそっと手で払う。
ネットやアプリを活用して、なんとか自分でヘアアレンジに挑戦してみたけど、今日の天気のおかげか、猫っ毛の髪はあまり綺麗に決まらなかった。


「やっぱり、ヘアサロン予約すればよかったかな……」


ちょっと残念な気分でボソッと呟くと、優さんが小さく浅い息を吐いた。


「どっちにしても、無理だっただろ? 夏帆、今朝盛大に寝坊してくれたし」


車のキーをポケットに忍ばせながら、結構ドライに口を挟む。
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