おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
エリックが眠っている部屋の扉を軽くノックすると、中から疲れはてた女性の声が聞こえた。
その声はあまりにも疲れはてており、いったい誰がいるのかわからず、リンネは恐る恐る中に入っていった。

「あっ、ソフィアさん……
あの、エリック様のご様子はどのような状態ですか?

あと、ソフィアさんも少し休んだ方が……」

中にいたのは少し前までレース編みを教えてくれていたエリックの母親、ソフィアだった。
ソフィアの様子はとても疲れはてており、生気を無くしていた。

「リンネ様……
エリックはまだ目覚めません。
あれから2ヶ月も経っているのに、この子はまだ目を覚ましてくれないのです。
エリックはこのまま目を覚まさないかもしれません。
どうか、婚約を破棄してください。このまま目覚めるのを待っていたらリンネ様が行き遅れてしまいます」

まさか、婚約を解消して欲しいと頼まれると思っていなかったリンネは驚いた。
しかし、リンネは毅然とした態度でソフィアに言い返した。

「私は、エリック様の伴侶になります。
エリック様が目覚めるまで、私は毎日でもこの部屋に通います。
私を守ってくださるのはこの世でただひとり、エリック様だけです。
今度は私がエリック様を目覚めるまで待つという形で守っていきます」

まさか、婚約破棄にここまで反対されると思わなかったソフィアは一度大きく目を見開き、「ありがとうございます」とリンネに頭を下げた。

そしてそのまま部屋を出ていった。
最後に、「今日からはリンネ様がエリックが目覚めるのを待っていてください」という言葉を残して。
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