約束のエンゲージリング
その後は、お客様も多く電話も鳴り続けて配達から帰ってきた彼と忙しい時間を過ごした。
『さて、、閉店時間になったから閉めようか。岩田さん、ここの片付けお願いしていい?俺は裏を片付けて来るから。』
「ん、分かった。」
私は店内の戸締り、彼は作業場を片付け終わってエプロンをロッカーに掛けてバックを持ってロッカーを出ると、同じく帰る支度が終わった彼がロッカーを出た所で待っていた。
『今日もお疲れ様。じゃあ、帰ろうか。』
「、、だから毎回送ってくれなくていいよ。ここからすぐそこだし。それに今日は孝兄のとこ寄っていくから。」
『いいから行くよ。どうせ同じアパートに帰るんだから。それに孝の家だって目と鼻の先でしょ。』
「、、そうだけど。」
『ほら、ぼさっとしてないで帰るよ。沙羅ちゃんもご馳走作って待ってるだろうし。』
そういって強引に私の手を引いて店を出る。
普段は柔らかいのに、こういう時だけ強引な彼にため息をついて彼の横を並んで歩く。
彼は観念した私を横目で確認して、満足そうな表情をしてから繋いでいた手をそっと離した。