約束のエンゲージリング
フラワーショップ牧野から私が借りているアパートは歩いて10分ほどの場所で、彼もまた同じアパートに住んでいる。
勿論、部屋は別だ。
仕事場から近いこのアパートに彼が住んでいて、フラワーショップ牧野に就職が決まって数年後、兄の結婚を機にこのアパートに引っ越して来た。
優しい兄夫婦は結婚後も一緒に住もうと提案してくれたが、いつまでも兄に頼るのは申し訳なくて折角の新婚を邪魔するのも嫌で反対を押し切り一人暮らしを始めた。
兄を説得させるのにはかなり根気がいったが、彼が兄を説得してくれてようやく一人暮らしが認められたのだ。
決定打は彼の言ったあの言葉。
『、、孝、千佳だってもう子供じゃない。別に孝達と住みたくない訳じゃないさ。、、家を出ようとしてる1番の理由ぐらい分かるだろ?千佳の優しさを組んであげなよ。それにそんなに心配しなくても千佳は俺が住んでるアパートに一人暮らしさせるから。それなら孝も安心でしょ?孝の家からも近いし、更に店にも近くなっていいだろ?』
きっと彼のあの言葉がなかったら、私の一人暮らしは認められなかった。
あれだけ真剣な表情で孝兄を説得してくれたのに、1番私を子供扱いしているのは彼の方だ。
夜道が危ないからと仕事終わりには必ず、一緒に帰る。