約束のエンゲージリング
ずっと妹にしかみられていなかった25年間。
一度でいいから女として見られたい。
それがこんな形で報われる日がくるなんて。
引っ越しをする前にステキな思い出が出来て良かったと思えた。
ハジメテを大好きな人に貰ってもらえて、これで思い残すこともなく、次の恋に進める。
本当に心からそう思っているのに頬に流れる涙が止まらない。
「っ、、、、!」
彼が目を覚ますまでに普通通りの私でいなきゃいけないのに、、何事も無かったかのように笑顔で〝おはよう〟って言わなきゃいけないのに涙を止める術がない。
成人して大人になったんだって思ってた。
でも大人になるって案外難しい。
こういう感情を全て隠して前を向いて進まなきゃいけない。
優しい彼が目を覚ました後、どんな行動をするのか手に取るようにわかる。
どんな理由にせよ、私を抱いてしまった事をきっと後悔するだろう。
そして責任を取って私と恋人同士になってくれようとすると思う。
だから彼が責任を感じなくて済むようにこれは私が望んだ〝一夜限りの大人の関係〟だったのだと思わせなきゃいけない。
その為には冷静でいなければ。