約束のエンゲージリング
でも、、どうせ彼に抱かれたのなら覚えていたかったとつい欲張りな事を考えてしまう。
その温もりを肌で感じたかった。
涙は止まる事なく、暫くソファーに座り泣き続けた。
随分と長い間涙を流し続けた事と昨晩飲み過ぎた所為で喉が乾く。
そこで冷蔵庫を開けて飲み物を取ろうとするが、水がなくなっていて仕方なく本館の方へ買いに行こうと玄関に向かった。
旅館からお借りした雪駄を履いていると部屋の奥からもの凄い音がして、バタバタとこちらに近づいてくる。
振り返る間もなく両肩を背後から掴まれ、驚いて悲鳴を上げた。
『、、何してるの。』
少しばかり息遣いの荒い低い彼の声が耳に響く。
彼にバレないように小さく深呼吸してから笑顔を貼り付け、ゆっくりと振り返る。
「おはようマサさん。ゆっくりし過ぎてもうすぐお昼だよ?冷蔵庫開けたら飲み物がお酒しか入って無かったからお水でも買いに行こうと思ってね!マサさんの分も買ってくるよ。何がいい?」
必死に冷静を装っているのに無言でこちらを真っ直ぐと見つめてくる彼。
その視線が苦しくて、まるで逃がさないと言われているような気がして強めに身体を引いて彼から離れた。