約束のエンゲージリング
episode10


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「ありがとうございました。またのご来店、お待ちしております。」







お供え用花束を購入してくださった年配のお客様を笑顔で見送って頭を下げた。

誰もいなくなるとまた表情が曇ってしまう。









昨日は本当に社会人としてあるまじき行動を取ってしまった。

配送から帰ってきてドアの隙間から見えた光景にショックを隠しきれず店長である彼に何も告げず仕事を放棄してしまった。

それも体調不良という嘘までついて、、。






いくらショックだったからと言ってもやっていい事といけない事の区別がつかないほど気が動転してしまい、いくつになっても子供のままな自分に嫌気がする。


店を飛び出した後、携帯の電源を切った後直ぐに荷造りをして部屋をでてビジネスホテルに逃げこんだ。






きっと優しい彼の事だ。

飛び出した私を心配して会いにきてくれると思っていた。

だから兄の家ではなくビジネスホテルを選んだのだ。





案の定、ホテルに着いて暫くすると彼から着信とメッセージが大量に来ていた。

どんな理由でも彼からの鳴り止まぬ着信が辛いのに嬉しいと感じてしまう自分。



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