ブラック研究室からドロップアウトしたら異世界で男装薬師になりました
私の母は病弱で、子供をふたり産めたのが奇跡だと言われていた。私はベッドサイドに腰掛け、母に薬を飲ませる。彼女は私がまとう服に視線を向けた。
「また男の子みたいな格好ね」
「変かしら」
「いいえ。でも、リナは髪が長くてもかわいいわ。一度伸ばしてみたら?」
母は私が女装したほうが喜ぶ。女だから、女装という言葉はおかしいかもしれないが。反対されているわけではないが、男装する娘を心配しているのは知っていた。私は話をごまかすように、窓の外へ目を向けた。
「今日は天気がいいから、お庭に出ましょう」
「明日から仕官でしょう……私にかまわないで、準備しなさい」
「あら、母様は私と散歩したくないの?」
母は困ったような顔をして、「わかったわ」と言った。
私は母を車椅子に乗せ、庭を散歩した。母は陽光に目を細めている。
「春はいいわねえ」
彼女を見ていると、あちらに残してきた母を思い出す。今世の母のように美しい人ではなかったが、懸命に生きているところが似ている。
あの世界に戻りたいかと尋ねられたら否だが、前世に母を残してきたのだけが心残りだった。あれから十八年も経った。この世にいない可能性もある……。
「リナ、どうかした?」
ぼんやりしていた私は、母の声にハッとする。
「いえ、なんでもないわ。お部屋に飾る花を摘んでいきましょうか」
「そうね。あ、ハマナスが咲いているわ」
「また男の子みたいな格好ね」
「変かしら」
「いいえ。でも、リナは髪が長くてもかわいいわ。一度伸ばしてみたら?」
母は私が女装したほうが喜ぶ。女だから、女装という言葉はおかしいかもしれないが。反対されているわけではないが、男装する娘を心配しているのは知っていた。私は話をごまかすように、窓の外へ目を向けた。
「今日は天気がいいから、お庭に出ましょう」
「明日から仕官でしょう……私にかまわないで、準備しなさい」
「あら、母様は私と散歩したくないの?」
母は困ったような顔をして、「わかったわ」と言った。
私は母を車椅子に乗せ、庭を散歩した。母は陽光に目を細めている。
「春はいいわねえ」
彼女を見ていると、あちらに残してきた母を思い出す。今世の母のように美しい人ではなかったが、懸命に生きているところが似ている。
あの世界に戻りたいかと尋ねられたら否だが、前世に母を残してきたのだけが心残りだった。あれから十八年も経った。この世にいない可能性もある……。
「リナ、どうかした?」
ぼんやりしていた私は、母の声にハッとする。
「いえ、なんでもないわ。お部屋に飾る花を摘んでいきましょうか」
「そうね。あ、ハマナスが咲いているわ」