ブラック研究室からドロップアウトしたら異世界で男装薬師になりました
 トップで結んだまばゆい金の髪。スカイブルーの瞳。女特有の線の細さが親しみやすいのだろうか。先ほどからダンスをしてくれと令嬢たちから引っ張りだこなのだ。
 実際には男ではないため、特別な関係にはなれないが、ダンスくらいはすることにしている。女性には優しくしなければ。それは男として生きる私のポリシーだった。
 私のほかにもうひとり、女性に囲まれている男がいた。よく見えないが、おそらく良家の子息かつ美形なのだろう。まるでタイムセールの商品のようだ。パーティーは異性と交流する場でもある。いっときの遊び、あるいは結婚というゴールへの布石。
 王宮のダンスパーティーは退屈だが、貴族のたしなみとして出なければならない。私はじきに王宮薬師として父の跡を継ぐ。華やかな場所は苦手だ。本当はさっさと帰って薬の調合をしたいのだが、貴族である以上社交は必須項目だ。
 ふと、ダンスをしていた人々が、バルコニーへと向かいだした。
「花火が始まりますわ。ロダン様、行きましょう」
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